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ガバナンス強化とBCP ~我が社に自浄能力はあるのか?~ | KKEの 企業防災・BCPコラム

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ガバナンス強化とBCP
~我が社に自浄能力はあるのか?~

BCPコンサルタントの森健先生による連載は、今回も対話形式でBCPのエッセンスをお届けします。架空のインタビュアー「森梅太郎」が様々な企業のBCP関係者にインタビューし、それぞれの立場から見える課題に迫ります。今回はガバナンスとBCPについてです。

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インタビュアー・森梅太郎(以下、梅太郎) 皆さんこんにちは。インタビュアーの森梅太郎と申します。今回も日本トップクラスのある企業の監査役(匿名希望なので「監査役X(エックス)」さんと呼ばせて頂きます)にBCPに関するインタビューを続けたいと思います。
今回のテーマは「ガバナンス強化とBCP」です。さて、どんなお話が飛び出してくるでしょうか。それでは、インタビューを始めましょう。

ガバナンス強化とBCP ~我が社に自浄能力はあるのか?~

梅太郎 こんにちは。今日もよろしくお願いいたします。
この対談企画も3回目になりました。今日はどのようなお話でしょうか。

監査役X 梅太郎さん、今日のメインテーマはガバナンスです。
ガバナンスという文字通り企業経営の根幹に関わる概念と、BCPの関係性について考えていきたいと思います。

梅太郎 うーーーん、、、今回も難しいテーマ設定ですね。。。
コーポレートガバナンス・コードを東京証券取引所が設定して、上場企業を中心にガバナンス強化への取組みが進められているという程度の認識はありますが。

監査役X そうです。まずそもそも論として、ガバナンスの定義ですが、コーポレートガバナンス・コードでは、「会社が、株主をはじめ顧客・従業員・地域社会等の立場を踏まえた上で、透明・公正かつ迅速・果断な意思決定を行うための仕組み」とされています。
そして大切なのはその目的です。それぞれの会社における持続的な成長と中長期的な企業価値の向上、そして会社、投資家、ひいては経済全体の発展がその目的であると整理されています。
また、コーポレートガバナンス・コードの基本原則3では、「上場会社は、会社の財政状態・経営成績等の財務情報や、経営戦略・経営課題、リスクやガバナンスに係る情報等の非財務情報について、法令に基づく開示を適切に行うとともに、法令に基づく開示以外の情報提供にも主体的に取り組むべきである。」としています。この経営戦略の中にサスティナビリティへの対応や、急性的な気候変動リスクの問題、そしてその対策の一つとしてBCPが位置付けられています。

梅太郎 ご紹介ありがとうございます。ということは、BCPの問題は、単に利潤追求の側面からだけではなく、経営戦略やサスティナビリティの観点からも、より重要度を増しているということですね。

監査役X そのとおりです。
しかしその一方で、現実の各企業においては、コーポレートガバナンス・コードの遵守が目的になってしまい、本当に重視すべき「投資家保護」や「資本市場の信頼性確保」の観点からはまだまだ課題が多いのです。
具体的には、ひな型どおりの形式的・表面的な記述や具体性を欠く記述が目立ってしまい「言語明瞭・意味不明」になっているとの指摘もあるくらいです。

梅太郎 なるほど。せっかくガイドラインというか、ソフトローというか、考え方の原則論が整理されているのに、やってます感を出すことに終始してしまっているのですね。目的と手段の逆転現象は、これまでの日本的組織の十八番ですが。

監査役X そうなんです。大切なのは、どうして表面ばかり繕うのか、偽装まではいかないにしても、実効性のない取組みをもってよしとしてしまうのかという「問題の本質」に踏み込んだ議論が、あまりなされていないという点です。

梅太郎 ありがとうございます。重要な指摘だとは思いますが、一方で非常に整理が難しいと思います。何かヒントを頂けないでしょうか。

監査役X そうですね。例えば、こう考えてはいかがでしょうか。
問題というのは、一度に解決しようとすると難しいですが、いくつかに分けることで解決の方向性が見えてきたりします。具体的には、今の議論を、従業員や経営者個人単位、職場単位、経営層の3つの視点で整理してみたいと思います。
まず個人単位でいうと、多くの企業では、コンプライアンスの考え方が浸透していなかったり、そもそも考え方が間違っていたり、採用の段階から倫理観の欠如した者を採用してしまったりと課題は山積です。個人単位では、躾(しつけ)の部分も含め、一人ひとりの従業員や経営者が、高い倫理観をもって職務にあたるよう、徹底的なコンプライアンス教育と、その延長線上での組織風土改革が必要だと思います。ものすごく単純化すると、まずは一人ひとり「嘘ごまかし」をするなということです。
次に職場単位でいうと、是々非々の議論ができるように、論理的なコミュニケーションを心がけ、同時に徹底したハラスメント防止を実行し、説明責任に満ちあふれた職場をつくっていく必要があります。力による統制は、そもそも民主主義的ではありません。上司側ほど品質の高い説明責任を果たすべきです。
そして経営層は、企業全体が「健全で、自浄作用を失っていないか」をしっかり監督することが求められます。これは、スキルマップで互いに経験自慢をするような話ではなく、個々の経営者の「正義感・倫理観と覚悟」に負う部分が非常に多いです。
いっぽうで「指摘しない(できない)監査役」も増殖中という懸念もあり、現実的には牽制・監督強化に程遠い会社もあります。
責任とは対応することです。リスクを確実に把握し、低減し、開示する正直で高い倫理観を有した経営者が増えてくれるといいのですが。

梅太郎 面白いです。階層別に分解して問題を捉えていくのですね。
最後に、今までの議論がBCPとどのように関連してくるのかを教えてください。

監査役X BCPは、自然災害などのリスクが顕在化したときに、被害を局限化し、同時にスムーズな復旧を果たすための計画と備えです。そしてこのBCP上のリスク・課題は、どうしても目を背けたくなるような戦略レベルのリスクから、担当者が1日で改善できる課題まで、千差万別です。
しかし、企業のガバナンスが機能していない場合、特に、倫理観が低く、刹那的な判断に終始し、管理すれども経営せずという状態になっていたり、そもそも課題に立ち向かって問題解決をしようという意識がないと、BCPという成果物風の作文を振りかざして、「リスク対策やってます偽装」をする結果となってしまいます。
ですので、ガバナンスを機能させることが、BCPの品質強化にとっては不可欠な要素だと思うのです。

梅太郎 ありがとうございます。今回も大変勉強になりました。インタビューにお付き合いいただきありがとうございました。次回もよろしくお願いいたします。【つづく】

 

森総合研究所 代表・首席コンサルタント 森 健

 

※本記事は、執筆者が経験した様々な組織でのBCPの課題を元に構成した架空のインタビュー記事となります。

 
           
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