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経営戦略とBCP~予算編成にBCPは反映されているか~ | KKEの 企業防災・BCPコラム

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経営戦略とBCP
~予算編成にBCPは反映されているか~

BCPコンサルタントの森健先生による連載は、今回も対話形式でBCPのエッセンスをお届けします。架空のインタビュアー「森梅太郎」が様々な企業のBCP関係者にインタビューし、それぞれの立場から見える課題に迫ります。今回は予算編成とBCPについてです。

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インタビュアー・森梅太郎(以下、梅太郎) 皆さんこんにちは。インタビュアーの森梅太郎と申します。今回も日本トップクラスのある企業の監査役(匿名希望なので「監査役X(エックス)」さんと呼ばせて頂きます)にBCPに関するインタビューを続けたいと思います。
今回のテーマは「予算編成とBCP」です。企業によっては1月から新事業年度に入る場合も、4月からはいることもあると思います。
年度ごとの予算編成にあたって、BCPの観点から何を気をつけるべきかについて、インタビュアーとしてこの森梅太郎が、監査役Xさんの知見・ノウハウを引き出していきたいと思います。今回もお付き合いください。

経営戦略とBCP ~予算編成にBCPは反映されているか~

梅太郎 こんにちは。今日もよろしくお願いいたします。
インフルエンザ、コロナ、マイコプラズマ肺炎の3種類の感染症が流行していますね。Xさんの体調はいかがでしょうか。

監査役X 梅太郎さん、お気遣いありがとうございます。
1年の疲れが出るタイミングですよね。もう若くないので、体調は気をつけていますよ。つい先日、人間ドックも行ってきました。胃カメラ検査の際に「上手ですね」と褒められました。実は昨年は叱られましたが。。。

梅太郎 そうですか。。。私はまだバリウムしか経験ないです。でも胃カメラのほうがすぐ状況が分かるのですよね?

監査役X 私もプロではありませんが、胃カメラのほうが直接カメラで対象を追うので、異常があればすぐ分かるのだとは思います。企業の経営層も、又聞きでバリウム検査的な現場へのアプローチばかりではなく、時には胃カメラ検査的に直接最前線を視てほしいものです。これは監査役としての愚痴ですが。

梅太郎 分かります。経営者は企業の指揮官ですから、私もそう思います。
NHKでドラマ「坂の上の雲」の再放送を毎週日曜日に楽しみに視聴していますが、ドラマの中で、海軍大学校の教官時代の秋山真之(さねゆき)が、「無識の指揮官は殺人犯なり」と言っていました。経営が最前線を自分の眼で視て、正しく指揮を執ることは、平時も有事も重要だなぁと改めて感じました。

監査役X あらま、私のセリフをとられた格好ですね(笑)。梅太郎さん、そのとおりです。内部統制(損失の危険の管理)の観点からも、経営者は常に「有識の指揮官」であるべきだと思います。

梅太郎 ありがとうございます。経営戦略とBCPが今日のテーマなので、いい流れで本論に入っていけそうな気がします。そもそも経営戦略とBCPの関係性はどのように理解すればよろしいのでしょうか。

監査役X そもそも「経営とは何か」が日本企業では十分に整理されていませんね。特に「管理」と「経営」の区別が十分にできていないように感じています。一言で言うと、経営とは、数値を管理して利益をたたき出す数値面の判断と、その企業のために先行投資をして未来を描いていく判断とのバランス・均衡であると私は思います。
利益重視だけ、コストカットだけでは、企業は加速度的にブラック企業化していきます。しかし夢ばかり追っていたり、社会貢献ばかりに奔走していても、そもそも営利社団法人としては破綻してしまいます。このバランスをとることが経営だと思います。

梅太郎 分かりやすい整理ですね。ありがとうございます。では、我々がメインテーマとしている防災やBCPの取組みは、今の「数値」や「先行投資」との関係では、どのように考えればよいのでしょうか。

監査役X 防災・BCPの取組みは、数値優先の考え方からすると「コスト」と考えられるでしょう。そんな対策をしなくても、コストカットしてもっと利益を出せばいいのではと。一方、投資の観点からすると、今、防災やBCPに先行投資することが、未来の損失を防ぐのだから積極的に投資すべきではという考えになりがちかもしれません。

梅太郎 なるほど。そこでバランスが必要になってくるのですね。

監査役X そうなんです!!ただ、ここで注意すべき点が2点ほどあると思います。まず1点目は、自社の財務体力とのバランスです。防災・BCPの取組みは、ぜひ各社進めるべきですが、自社の財務状況を考慮しながら進めていくことが重要です。
2点目としては、コンプライアンスの観点が重要だと思います。財務体力上、やや厳しい投資になるとしても、耐震性に問題のある建屋内で従業員を業務に従事させることは、安全配慮義務違反の状態を事実上許容していることになります。このような場合は、財務的な考慮を抑制してでも、速やかに一定の対策を立案、予算確保の上、当該リスク対策を実施することが求められると思います。

梅太郎 要するに、財務体力を基本としつつ、リスクの性質も加味し、コンプライアンスにも配慮しながら必要な対策は積極果敢に実行する。但し、あくまでもリスクに見合ったリスク対策をということでしょうか。よく理解できました。今回もご指導ありがとうございました。【つづく】

 

森総合研究所 代表・首席コンサルタント 森 健
森総合研究所公式ホームページ:https://mori-global-consulting.com/

 

※本記事は、執筆者が経験した様々な組織でのBCPの課題を元に構成した架空のインタビュー記事となります。

 
 
 

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