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新任担当者へのメッセージ~サステナビリティ視点から防災・BCPを考える~ | KKEの 企業防災・BCPコラム

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新任担当者へのメッセージ~サステナビリティ視点から防災・BCPを考える~

官公庁や多くの企業では4月に新年度が始まります。今月からまた心機一転、新たな目標に向かって取り組まれている方々も多いことと思います。4月から新たに防災・BCPの担当部署に異動された方も、適度な緊張感と新たな分野への挑戦意欲を持って日々過ごされていることでしょう。

今回は「年度はじめ」にあたり、2022年4月というやや混沌とした状況の中で、今後自組織の防災・BCPについて、どのような視点を重視して御取組みいただくことが有益かという視点に立って、少しお話をさせていただきたいと思います。

正解は常に「現場」にある

まず新任の方々が気になるのは、よい参考書や教科書はないかという点だと思います。防災やBCPに関しては、官民ともに内閣府の防災担当から「ガイドライン」その他啓発用資料が示されていますので、基本を学ぶにはこれらをまず参照されると良いと思います。

昨今はガイドラインもテンプレート(雛形)も、残念ながらその品質にかなり問題があるケースが散見されていますが、こと内閣府のガイドラインに限っては、非常によく練られていると思います。教科書として「概念」や「用語」の整理に活用されてはいかがでしょうか。

防災・BCPの基本を公的資料で理解したうえで、皆さんには「現場」を重視していただきたいと思います。防災・BCPという分野は、比較的平易な用語が多く、机上の空論であっても「もっともらしく」聞こえてしまうことが多くあるというのが、2003年以来この分野に関わってきた筆者の正直な感想です。
実務を担当される皆さんは、最終的には「現場としてどう備え、どう対応するのか」という現実的な答えを都度出していく必要があります。これには、現場で何が起きているのか、そもそもどのような現場なのかをまず正確に、自分自身の目で確かめることが重要です。

企業であれば、本社ビルから出て、足繫く工場などの生産現場や、営業所などの営業の現場、時には仕入先や重要顧客とも積極的にコミュニケーションを図り、自社のサプライチェーンという「現場」を深く理解する必要があります。

自治体であれば、地図を片手にまちに出るのです。道路、河川、港湾、市街地、山岳地帯から海岸や河口まで、幅広く自分が守るべき地域を知りましょう。
実際に現場を映像でイメージできるようになっておくことが、有事の自信ある決断の基礎になる点を忘れてはならないと思います。

防災・BCPは真贋(しんがん)の区別がつきにくい分野

防災・BCPの専門家には諸々ありますが、単なる「物知り」を目指してはいけません。真の専門家とは、某ドラマの主人公ではありませんが「私、失敗しないので」と自信をもって言い切れる人材のことです。その分野において失敗しない方法を知悉した者こそが真の専門家なのではないでしょうか。これは防災・BCPに限らず、全ての業務分野において注意すべき点だと思います。

特にこの2022年は、世界的に混沌とする政情の中、SDGs、安全保障、人権、内部統制やガバナンス強化などの多種多様な社会的要請に応えることが、官公庁にも企業にも求められています。

一方で自治体も企業も、これらの外部環境に対応すべく様々な仕組みを構築してきましたが、そろそろ「増築型」で運営してきた委員会活動は形骸化し、取り組むこと自体が目的となり、組織としての戦略性が低下し始めてきている感があり、今般のコロナ禍における様々な事象がこれを印象付けているところです。

サステナビリティ視点の体制再構築が重要

では、組織としての戦略性を高め、広範な社会的要請に応えていく方法はないのでしょうか。

この点はまだまだ今後議論が継続するところと思いますが、筆者は官民問わず、サステナビリティの視点を取り込んだリスクマネジメント体制の整備が一つの正解だと考えています。具体的には、自治体や企業がそれぞれ抱える様々なリスクを全て洗い出し、同時にサステナビリティの視点も加味し、トップ(首長や社長)の下でこれらのリスクを一元的に管理する体制を構築していくのです。

その際に重要なのは、従来の縦割り型の知識・分野に拘泥することなく、自団体や自社の「経営戦略」の阻害要因をリスクとして体系的に整理し、重要なリスクへの対抗手段を「戦略的なシナリオ」として描き、年度単位の実施計画に具体化していくのです。乱立気味であった委員会組織も大胆に統廃合し、「御前会議」的な委員会活動から、真に議論し正解をつかむための会議運営にモデルチェンジし、組織の管理職は「経営」の視点をより強化していくことが求められています。
この大きな変革の中に「防災・BCP」を戦略として位置づけ、経営層の十分な関与の下、確実に災害リスクの低減を図っていくというダイナミックで戦略的な取組みが、今後求められていきます。

そのような意味で、2022年度の防災・BCP担当者の皆さんには「したたか」にそして「戦略的」に、常に「現場に思いをはせる」ことを大切にして、勇気をもって既成概念に挑戦して頂きたいと考えています。

以上

森総合研究所 代表・首席コンサルタント 森 健

 
           
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