風水害の季節であっても、地震大国日本においては、常に「もし今地震が発生したら・・・」を考え続ける必要があります。特に各拠点の責任者は、地震発生時には拠点対策本部の責任者(本部長)として、迅速かつ的確な初動対応指揮が求められます。このため、スタート(初動)でつまずかないような平時の備えが重要です。
地震被災拠点の責任者として
不幸にして、自拠点が被災した場合には、突然目の前で起きた「圧倒的な状況の変化」に冷静に対処していく覚悟が求められます。まず深呼吸し、何が起きたのかを冷静に理解し、最初にどのような対応が求められるかを考え、勇気をもって「一歩目」を踏み出しましょう。
初動対応は、そもそも情報収集が困難なことが多く、情報不足の中での対応が求められます。このような場合は「被害想定」を活用し、「おそらく周辺地域社会は・・・のようになっているだろう」というように仮説を立てて、積極果敢に決断しましょう。不決断が最大の悪策となることを忘れてはいけません。
同時に、危機管理体制を構築し、「責任者ここに在り」として拠点メンバーに指揮官の所在を示し、情報を1か所に集めさせ、指揮命令系統を確立することも重要です。そして当面の間は「人命最優先で対応する」という基本方針を拠点全体に周知徹底しましょう。自社の事業継続を図ろうとし、かえって無理な対応となり被害が拡大してしまう可能性もあります。この点にも注意しましょう。
地震時の健在拠点における当事者意識
他の拠点が被災した場合は、健在拠点の責任者として、仮に本社の対策本部から指示が来ない場合であっても「何か被災拠点を支援する方法はないか」と思いを巡らせましょう。
まず幹部メンバーを招集し、健在拠点として危機体制に移行するとともに、災害情報を収集して支援メニューについて本社と調整に入りましょう。人的な支援もあれば、事業継続に関する要請が発生するケースもあります。あらゆる可能性を排除せず、強力な支援態勢を構築しましょう。
地震時の本社拠点としての備え
もし本社が被災した場合には、本社メンバーは被災拠点として防災活動に専念することが求められます。その結果として、本来であれば本社が果たすべき「全社統制」を一定期間本社以外の他の拠点がバックアップする必要が生じます。
例えば東京に本社を置いている場合、「3日分の防災備蓄をしたから、よし首都直下地震対策は完了だ!」とはなりません。首都直下発生時に本社従業員を守ることも重要ですが、同時に他拠点との連携など「全社統制機能」をどのように維持するかが大きな課題となります。
現実的には、規模が2番目の拠点に本社の代替をさせることが考えられますが、平時からこの拠点(2番目の拠点)が機能するように教育・訓練を実施し、ハード面の準備も整え、要員配置についても有事への備えを考慮したものにすることが大切です。
自拠点だけが「守備範囲」ではない
一般的に地震発生時の初動対応としては、本社を含む自社(自社グループ)の拠点の被害状況を把握することが第一に重要になります。しかし現実的には自拠点以外の被災状況も視野に入れた初動対応が求められる場合があるので注意が必要です。
例えば、局地的に地震が発生し、幸い自拠点が被災しなくても、ライバル企業(競合他社)が被災した場合には、復旧支援に関する要請が入る可能性もあります。また、急激な増産を求められる場合も発生します。ライバル企業の拠点配置も視野に入れた初動対応への備えが求められることもある点に注意が必要です。
今回も最後までお読みいただきありがとうございました。
以上
森総合研究所 代表・首席コンサルタント 森 健