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感染症対策とBCP ~安全配慮義務を履行するために~ | KKEの 企業防災・BCPコラム

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感染症対策とBCP
~安全配慮義務を履行するために~

BCPコンサルタントの森健先生による連載は、今回も対話形式でBCPのエッセンスをお届けします。架空のインタビュアー「森梅太郎」が様々な企業のBCP関係者にインタビューし、それぞれの立場から見える課題に迫ります。今回は感染症対策とBCPについてです。

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インタビュアー・森梅太郎(以下、梅太郎) 皆さんこんにちは。インタビュアーの森梅太郎と申します。今回も日本トップクラスのある企業の監査役(匿名希望なので「監査役X(エックス)」さんと呼ばせて頂きます)にBCPに関するインタビューを続けたいと思います。
今回のテーマは「感染症対策とBCP」です。少しずつ寒さ募る今日この頃です。季節性のインフルエンザも気になるところですが、感染症の世界的大流行(パンデミック)を念頭に置いたBCP(事業継続計画)のあり方についても再点検いたしましょう。

感染症対策とBCP ~安全配慮義務を履行するために~

梅太郎 こんにちは。今日もよろしくお願いいたします。
この対談企画も5回目になりましたね。今年の夏は異常な暑さでしたが、最近はようやく冬らしくなってきましたね。インフルエンザの予防接種、お済みですか。

監査役X 梅太郎さん、ありがとうございます。先週の土曜日に、近所のクリニックで予防接種を受けてきました。監査の仕事は出張が多いので、体調管理は重要ですから。
また、予防接種を済ませた直後の瞬間が、油断しやすいタイミングでもあるので、当分の間「残心の構え」は崩さないようにします。

梅太郎 ??? 残心の構えって、何ですか?

監査役X そこですか(苦笑)。。。
残心の構えというのは、例えば剣術などで、相手に打ち込んだあと、相手の反撃に備えて心を残しておくという意味だったと思います。分かりやすく言うと「油断するな」ということでしょうし、「勝って兜の緒を締めよ」の変異株的表現ですね。

梅太郎 今日のXさんの例えにはついていけない気がしますが、、、本論に戻りたいと思います。人類は2020年から新型コロナウイルスのパンデミックに見舞われ、各国政府も、地方自治体も、また企業や一般市民も大変苦労しました。今日は感染症対策とBCPの関係性についてお伺いしたいと思います。

監査役X 分かりました。まず感染症対策の基本についてお話しましょう。
そもそも感染は、感染源(ウイルス)の存在、人の存在、そして感染経路の3つの要素が揃った際に成立します。そこで重要なのは「感染経路の遮断」になってくるのです。ウイルスは目に見えないので、対抗策は難しいです。また我々は人類なので、人の存在を前提としています。
とすると、全ての対策は「感染経路を遮断するためには、具体的にどのような取組みが必要か」という点から考えることが重要なのです。

梅太郎 ありがとうございます。感染症対策の基本は「感染経路の遮断」なのですね。よく理解できました。ということは、季節性のインフルエンザに罹患しないように、普段から備えておくことが、実は新型インフルエンザパンデミックの備えにもつながっていくのですね。

監査役X その通りです。「新しい生活様式」とか「咳エチケット」など、コロナ対策で議論になった基本的な取組みの積み重ねによって、平時からリスクを少しでも低減していくことが重要ですし、本来はこれを習慣化したいところです。

梅太郎 そうですね。感染症対策においても「日頃の備え」が重要ですね。
BCPの観点からは、どのような点に注意が必要でしょうか。

監査役X BCPの観点からは「徹底的に業務の属人化を回避する」という視点が重要だと思います。業務ごとに主担当と副担当を置き、主担当が就業できない場合には、副担当が主担当を代行できるような体制を、平時から作っておくことが大切です。
近年は、フリーアドレスになったり、テレワークが進んだり、職場内で担当者間の連携がとりにくい推進体制になりがちです。
そこで、特に危機発生時に継続すべき事業や業務については、優先的には平時からバックアップ体制を強化し、同時に内部牽制(けんせい)も働かせておくことが、BCPと内部統制双方の視点から重要です。

梅太郎 ありがとうございます。よく理解できました。パンデミックになるまえに、平時の業務品質の向上と、職場の風通し、協力体制・相互応援体制を構築しておくことが大切なのですね。

監査役X そうです。日々監査を通じて感じていますが、日本企業はこの連携・協力が弱いのです。実はBCPの質的強化が、自社の国際競争力の再生につながるのだという認識を、経営層は強く持つべきなのでしょう。

梅太郎 ありがとうございます。今回も大変勉強になりました。コロナのパンデミックが過ぎ去ったからといって油断せず、次の新型インフルエンザパンデミックに備え、私も「残心の構え」でいきたいと思います。
今回もお付き合いいただきありがとうございました。次回もよろしくお願いいたします。【つづく】

 

森総合研究所 代表・首席コンサルタント 森 健
森総合研究所公式ホームページ:https://mori-global-consulting.com/

 

※本記事は、執筆者が経験した様々な組織でのBCPの課題を元に構成した架空のインタビュー記事となります。

 
           
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