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災害時の全社統制を考える② 平時の業務改善・内部統制の観点から | KKEの 企業防災・BCPコラム

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災害時の全社統制を考える② 平時の業務改善・内部統制の観点から

「有識者」や「専門家」という言葉が毎日のように、メディアをはじめ様々な場面で飛び交っていますが、そもそも「専門家」とはどのような資質・能力を有する者を指すのでしょうか。この点、筆者流の理解は、専門家とは「全ての分野に幅広く精通しつつも、特に特定の分野において失敗しない方法を知っている者」だと考えています。つまり、特定の(狭い分野の)物識りではなく、絶対に失敗しない方法論・解決策を知っているのが専門家であるという認識です。

そして、このコラムのメインテーマである防災やBC(事業継続)は、企業の経営戦略にかかわる取組みであること、またサプライチェーン全体のリスク対策の意味があることからも、これを推進するための専門性というのは、「幅広い視野・識見」と「高度な専門性・実務経験」の双方が本来求められているのでしょう。

防災・BCPは特別な取組みではない

上記の問題・論点は、防災・BCPの取組みを「特別な取組み」として理解するか、そもそも企業経営や通常業務の中に本来織り込んでおくべきものとして捉えるかという点にも関連しています。

本来、防災・BCPの取組みは「自社の災害対策における弱点補強」がその内容ですから、特別なものではなく「本来取組むべきことを、意識して今実施している」と考えて頂いたほうが、組織内にも浸透しますし、無理なく実効性を高めることができると思います。

閑話休題。かなり昔に各企業に導入された「人事評価制度」も実は似たようなところがあって、人事部が時期になるとうるさく催促するから「人事評価シートでも作成するか」という管理職が多い職場はあまり感心しません。
そもそも人事評価は、業績評価(仕事の評価)と能力評価(部下の評価)を、具体的な事実(評価事実)に基づいて公平・公正に評価するものです。そして業績評価は職場管理の内容である「仕事の管理」にあたり、能力評価は「部下の管理」にあたることを考えると、人事評価=職場管理という点に誰しも気づくことでしょう。
つまり「人事評価制度を導入する」というのは、全く新たなシステムを導入するのではなく、本来管理職が果たすべき職場管理(マネジメント)を仕組化・ルール化するだけのことで、そもそも制度以前に管理職が本来取組むべき内容なのです。

人事評価と同様に、防災・BCPを外付けのプラスアルファの取組みとして整理するのではなく、本来実施すべき内在的事項を整理したものと捉えるほうがよいでしょう。

平時の業務改善や内部統制と関連付けて考える

内在的なものという視点からすると、自然災害に対する対応能力を高めるために、日々の「業務改善」の一環としてBCPの活動を捉えることも可能ですし、そもそもこれは通常業務の業務基盤強化にもつながる取組みです。

災害時に部門ごとにどの業務を優先的に維持・継続するかの判断をするためには、まず現在の業務分掌規程が正確か、業務分担表は更新されて担当ごとの責任範囲は明確になっているか、万が一担当者不在になった場合のバックアップ体制は強化されているかという、業務改善活動そのものといえる取組みが部門別にBCPを策定する上では重要になりますが、これは視点を変えれば通常業務そのものともいえるわけです。

また災害対策本部を頂点とする災害時の「危機管理体制」も同様で、平時の内部統制が機能不全を起こし、通常業務の指揮命令系統に問題があったり、経営理念が十分に浸透していなかったり、トップの考えに(不合理な)異を唱える者が多い場合は、有事に体制を切り替えたところで、組織としては機能しないことになってしまいます。

最近のように変化のスピード自体が速く、ドラスティックに物事が変化する時勢においては、平時と有事の境界線が不明確になっていますので、より一層様々な事柄を有機的かつ統合的に関連付けて取組むことが求められているのではないでしょうか。

以上

森総合研究所 代表・首席コンサルタント 森 健

 
           
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