コロナ禍に入って3年目の2022年も師走に入りました。流行の波「第8波」に対しては油断大敵ですが、今同時にどのように真のウイズ・コロナ社会を描き切るかが問われています。
また、地震災害に対する備えも、引き続き粘り強く実施していきたいところです。危機管理体制(災害対策本部体制)は機能するか、防災計画やBCPは内部にきちんと周知され浸透しているか、特に「事業」や「業務」の中断阻止や早期復旧への実効性ある備えになっているかについて、推進側/監査側そして投資家視点での再点検がますます求められています。
そのような中で今回は、基本に戻って「初動対応のあり方」について、特にこれから迎える年末年始の長期休日を念頭に、考えてみたいと思います。
初動対応に関するリスク・課題
初動対応に関する課題を自社として整理しておくことは、非常に重要です。ついつい課題を具体化する前に、対策案を考えがちですが、リスク・課題は組織によって異なるので、自社事業・業務の実態を踏まえて、まず全体としてこれを整理しておきましょう。
夜間に発災した場合にはどのような課題があるのか、発災する時間帯が終業時間直後の場合と深夜とで差異はあるのか、土日等の休日と年末年始等の長期休日では課題は異なるのかなどなど。深掘りした上で対策を検討しましょう。
一般的には、例えば夜間発災した場合に備えて、まず自分自身が被災しないように、就寝場所を工夫する、住宅の耐震補強を進めるといった個人単位の防災対策の強化も必要です。また夜間の参集は困難を伴うので、自社拠点近傍で社宅を貸与するなどの工夫も必要ですし、同時に参集要否の判断基準を明確にしておくことも必要です。
職場への参集途上で被災するリスクもありますし、せっかく参集しても、要員の質・量ともに不足の場合は、対策本部等の危機管理組織が機能しない場合も生じてしまいます。
年末年始など長期休日における初動対応
中でも年末年始等の長期休日においては、対策本部(本社)や自社の各拠点に参集可能な要員数が圧倒的に少なくなる可能性があります。また休日ですから致し方ありませんが、年末年始等は日中から飲酒する機会も他の時期に比して多くなり、被災を免れても自家用車による参集が不可能な場合も想定されます。またグローバルにみて水際対策が緩和されつつある昨今、主要メンバーがリフレッシュのため海外旅行に出ていることも考えられ、通常の夜間・休日よりさらに初動対応に関するリスクが増大している可能性があります。
ワーク・ライフ・バランスの時代に、古臭いかもしれませんが、、、
これらの課題に対して「年末年始だから初動対応に支障を来すこともリスクとして受容する」という考え方も成り立ちますし、一方で「重要顧客から一定期間内の復旧を求められている以上は、貴重なリードタイムを無駄にはできない」とする考え方もあると思います。今世紀的には前者が正解なのかもしれませんが、筆者はやはり次の一節にも感銘を受けてしまいます。
『中曽根内閣の5年間(1982年~1987年)、後藤田官房長官の下で官房副長官を務めた藤森昭一さんは、シングルプレイヤーなのにゴルフを自粛していた。そればかりか、いざというとき官邸に駆けつけるために、都内を離れることすら一切しなかったのである。私たちは藤森さんのその心構えに大いに感服させられ、また実際に助けられたことも多い。』 ( 『重大事件に学ぶ「危機管理」』 佐々淳行著より引用)
通常の夜間・休日と同様、年末年始も、やはり「一定の備え」を持っておくことが、スムーズな初動対応につながります。危機管理を管掌する人々は、リフレッシュしつつも備えを忘れないことが大切なのでしょう。
以上
森総合研究所 代表・首席コンサルタント 森 健