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初動対応を考える②上位職層ほど「多能工」である必要性 | KKEの 企業防災・BCPコラム

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初動対応を考える②上位職層ほど「多能工」である必要性

企業各社では、防災・BCPという自然災害等のリスク対策だけではなく、サイバー攻撃や経済安全保障、サプライチェーン全体のコンプライアンスの問題、TCFD提言への対応、コーポレートガバナンスの強化など、様々な経営課題に対して会議体(委員会等)を増築することで対応してきました。
経営層・幹部社員にはそれぞれ管掌という「守備範囲」が決められ、既定の範囲で議論をすることが自然と求められ、ともすると所管外の分野・業務に対する無関心化が進んでいたりします。

ある評論家が先年「日本の弱点は全分野横断的な専門家が不在なことであり、これこそが日本の危機だ」と喝破していましたが、企業においても同様の病状が進んでいるように感じています。

コーポレートガバナンスにおいて求められるものは?

ESG投資の高まりやサステナビリティ対応の進展に伴い、コーポレートガバナンスも進化が続いています。特にプライム市場の上場企業を中心に、取締役会の監督機能を強化していくことや、取締役のスキルを「スキルマップ」として見える化し、それぞれの得意分野を活かしつつ、同時に専門外の経営マターであっても論理的・合理的に議論し監督することが要請されるようになってきました。

つまり、これまでの「専門」即ち特定の分野における専門的な知見・ノウハウを活かしつつも、新たな「専門」の概念、具体的には、全分野におけるリスクを横断的に洞察し、これを把握し、有効なリスク対策を立案しこれを開示することが企業として求められるようになってきたのです。

経営層や管理職層に求められるもの

その結果、経営層や管理職層には、全ての分野をカバーする基礎的な能力プラス、自分自身の強み・専門分野の両方においてその力を発揮する必要が生じています。現場の状況から経営戦略まで幅広く論理的に理解し、そのブラッシュアップをしていくことがより重要になります。

しかし現実には、役員や幹部になると個室が与えられ、相互のコミュニケーションが不活性化し、取締役会ではなぜか社外取締役の独壇場となり、社内の者が社外取に懸命に説明し、最後に「ご指導ありがとうございました。」とお礼を言うような会議になったりしています。こうなってしまう要因の一つには、取締役全体が分野ごとに過度に専門化してしまったり、論理的議論を避け会議内の平和を求め過ぎていることも考えられますが、やはり「多能工」のようなオールラウンダーが少ないことが真因のようにも感じています。

経営も初動も「多能工」である必要性

少し前置きが長くなりましたが、様々な経営判断・意思決定においても、平時のリスク評価や有事の危機管理においても、やはり上位職層ほど多能工である必要があると思います。特に災害時の初動対応は、出張者・外出者などもあり、オールスター・キャストで危機管理に臨むことは難しいのでなおさらです。災害時を想定したシミュレーション訓練では、よく少人数体制の対策本部訓練を行いますが、まさにこのような訓練は「有事の多能工」を育成する意味もあるのです。

有事における多能工の必要性は、訓練実施後には参加者全員、共通認識を構築してくださることが多いと感じています。しかし平時モード(通常経営モード)になると、まだまだ多能工的発想には切り替わることなく、すぐに「個室(自室)にGO」となってしまうことが多いように思います。この有事と平時のシームレス化を進め、常に多能工的視点で経営を視つつ、かつ有事の初動対応に備えていくことが、今各企業に求められています。

以上

森総合研究所 代表・首席コンサルタント 森 健

 
           
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