新型コロナウイルス感染症パンデミックも、ようやく出口を迎えました。ほっと一息つきたい心境の今日この頃ですが、かの山本五十六(いそろく)連合艦隊司令長官は、次のような言葉を残しています。
時は昭和15年(太平洋戦争直前)、東京である一大式典が挙行される中、国内の名士はこぞって式典に殺到しましたが、彼は違いました。
山本司令長官曰く 『もし万が一、この機に東京への奇襲攻撃があったらどうするのだ。皆が式典に夢中になっている今だからこそ、私はこうして長門(当時の連合艦隊旗艦)艦上にあって、空を睨んでいるのだ。』
まさに油断大敵、剣術でいう「残心の構え」と言え、これは危機管理においても重要な考え方だと思います。
次なるリスク・危機
残心の構えで周囲を見渡すとき、改めて企業を取り巻く環境はまだまだ至る処リスクありであると痛感いたします。首都直下地震や南海トラフ巨大地震も目前に迫っています。風水害の時期もいよいよスタートします。次のパンデミックも予想以上に早く発生するかもしれません。
今日の主題は風水害ですが、閑話休題。1つだけ皆様にお願いです。今回のコロナ禍の対応記録を自社として残し、トップ(社長や危機管理担当役員)や監査役も含めたメンバーで、振り返り・検証をして頂きたいのです。そもそもそのような声があまり上がっていないことも問題ですし、次の新型インフルエンザパンデミックはいつ来てもおかしくない状況です。ぜひ、今回の教訓を風化させずに、次のパンデミックに活かして頂きたいと思います。
風水害対策の基本
その上で、今日の主題の風水害対策ですが、基本は「浸水させない対策」と、浸水することを前提とした「早期復旧対策」を組み合わせることが、企業の防災・BCPの基本です。
まずは自社拠点の配置状況を再確認頂き、ハザードマップを参照して、浸水のリスク、土砂災害のリスクについてイメージしておくことが大切です。この際、拠点周辺の被害状況も併せて確認しておきましょう。自社拠点自体は高台の工業団地にあり、直接の被害を免れたとしても、周辺地域が水没して当該工業団地が孤立してしまうようでは、被災したのと同視した対応が求められる可能性があります。
また、風水害においては、地震災害と異なり、前触れ・前兆が一定程度の期間存在します。台風であればかなりの精度で進路予測が可能ですし、集中豪雨も一瞬にして起きるわけではないので、数十分、数時間程度のリードタイムは確保可能です.
風水害対策においては、このリードタイムの活用方法が一つのポイントになります。
初動対応は基本に忠実に。まず従業員の安全、次に事業継続。
風水害発生が見込まれる場合、各社はまず従業員の安全を最優先に対応する必要があります。
もちろん、浸水被害を最小限度に止めるために、止水板や土嚢を設置したり、重要設備や在庫を高所に移動させるなどの事前対策の実施も必要になりますが、これらはあくまでも「従業員の安全確保のための時間が確保できる場合」に限るということを、常に意識する必要があります。
また風水害においては、地元自治体の情報発信にも注意する必要があります。
地元自治体の災害対応の練度(品質)にもよりますが、常に適時適切にこれらの情報が発信されない場合(遅れてしまう場合)も想定しつつ、自社としてこれらの情報を参考情報と位置づけ、基本的には早めの決断・行動をとっていく必要があります。
特に、避難指示が発表されている最中に従業員を帰宅させることにならないよう、ご注意ください。過去のデータからも「移動中の被災」が多いことは明確であり、この点からも早めの、いや早すぎるくらいの決断と行動が重要であると思います。
いよいよ風水害の季節です。各社、必要な備えを点検し、迎撃態勢を整えましょう。
今回も最後までお読みいただきありがとうございました。
以上
森総合研究所 代表・首席コンサルタント 森 健